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2007年02月24日

これが日本の裁判の現実。(映画評『それでもボクはやってない』)

『それでもボクはやってない』2007年製作・日本

大ヒット映画「Shall we ダンス?」の周防正行監督の最新作は、れっきとした社会派映画だ。痴漢冤罪にあった一人の男性の裁判劇を、事件発生から判決まで克明に描き、日本の刑事裁判、警察捜査の問題点を浮き彫りにしている。

99.9%―刑事裁判で起訴されて有罪になる確率。本作のキーワードといえるこの数字の実態が、この痴漢冤罪裁判に秘められている。勝手に「有罪」と決め付けて、食ってかかる警察や検察の捜査不備を描き出しているのはもちろんであるが、本来ならば中立の立場にあるべき裁判官は、結局は国に属する者という立場であることも率直に描いている。警察や検察にたて突くことは、つまり国に逆らうということ。「無罪」判決を出すことはそれなりの覚悟が必要だということ。それが、99.9%のからくりなのである。

そんな社会派メッセージが強く出ていることもさながら、裁判シーンの見せ方がとても上手く、観客を飽きさせない。人物配置、カメラアングルなどが緻密に計算されていて、検察・被害者側と被告・弁護側の対決構図がとてもわかりやすく見せてくれる。

裁判の結果はここでは伏せておくが、「それでもボクはやってない」というタイトルを象徴するような結末を迎える。被告の主人公は、当初は感情的になるような行動もあったが、裁判を通して、裁判というものがどういうものなのかを悟り、最後は冷静に、かつ確固たる意思を持って、裁判と向き合うようになる。ラストのほうで主人公がつぶやいたセリフが印象深い。
裁判所とは、「とりあえず裁く場所」であると。
なんというか、こんなふうに痴漢の罪を着せられるのは御免である。できることなら、満員電車に乗りたくないものだ。

そんなふうに思いながら、帰路につき、電車を降りてすぐ目の前にとびこんできたのは、平成21年度から始まる「裁判員制度」の告知ポスター。この「裁判員制度」は、果たして真の意味での「中立性」を保った裁判を行なえるきっかけとなるのかどうか・・・。
もはや「裁判」とは無縁でいられなくなった全国民。ぜひとも一見をオススメしたい。

〜作品データ〜
<解説>
『Shall We ダンス?』の周防正行監督が、11年ぶりにメガホンを取った本格的な社会派ドラマ。電車で痴漢に間違えられた青年が、“裁判”で自分の無実を訴える姿を、日本の裁判制度の問題点を浮き彫りにしつつ描く。(Yahoo!映画より)

<あらすじ>
フリーターの金子徹平は、通勤ラッシュの電車で女子中学生から「痴漢したでしょ」と訴えられてしまう。まったく身に覚えのない金子は、話せば分かってもらえると思い、大人しく駅の事務室に行った。しかし、「ボクはやってない!」という訴えもむなしく、そのまま警察に連行されてしまう。その日から、留置所暮らしを余儀なくされた金子の無実を訴える戦いが始まった。(Yahoo!映画より)

<スタッフ>
監督・脚本:周防正行(『Shall we ダンス?)
音楽:周防義和(『シコふんじゃった』『死に花』)
製作総指揮:桝井省志(『ウォーターボーイズ』『スウィングガールズ』)

<キャスト>
金子徹平:加瀬亮(『ハチミツとクローバー』『硫黄島からの手紙』)
須藤莉子:瀬戸朝香(『着信アリ2』『DEATH NOTE』)
斉藤達雄:山本耕史(『ミラクルバナナ』『世にも奇妙な物語 映画の特別編』)
金子豊子:もたいまさこ(『ALWAYS 三丁目の夕日』『かもめ食堂』)
荒川正義:役所広司(『the有頂天ホテル』『SAYURI』)
佐田満:光石研(『ユリイカ』『ありがとう』)
土井陽子:鈴木蘭々(『オーバートライヴ』『Love Letter』)
大森光明:正名僕蔵(『小さき勇者たち〜ガメラ〜』)
室山省吾:小日向文世(『UDON』『深紅』)
田村精一郎:益岡徹(『県庁の星』『ALWAYS 三丁目の夕日』)
青木富夫:竹中直人(『スウィングガールズ』『あなたを忘れない』)

<関連作品>
 Shall We ダンス?

 日本の黒い夏〜冤罪〜
2007.02.24. 16:43 | TrackBack(3) | 映画評

この記事へのトラックバック

それでもボクはやってない
Excerpt: 最近、電車に乗って何か後ろに手がある!って思って振り返るとそれは女性。 男性はすごく気を遣って、なるべく女性の体に密着しないようにしてるんだな。 ってこの頃感じてた。 車中でも、「痴漢行為があった場..
Weblog: 我想一個人映画美的女人blog
Tracked: 2007-02-24 17:24

それでもボクはやってない DVD
Excerpt: 「シコふんじゃった。」「Shall We ダンス?」の周防正行監督が、 現在の刑事裁判の問題点に真正面から向き合い 11年ぶりに手がけた異色の社会派ドラマ。 ある青年が身に覚えのない痴漢容疑で逮捕され..
Weblog: 噂の情報屋
Tracked: 2007-06-08 20:04

観ました、「それでもボクはやってない」
Excerpt: 私生活でもいるよね、何とも思っていなかったはずなのに急に・・・何かをきっかけに気
Weblog: 乙女千感ヤマト
Tracked: 2008-03-03 11:53
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