またしても『時かけ』が輝いた。第11回アニメーション神戸賞 作品賞・劇場部門、第10回(平成18年度)文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞、第61回毎日映画コンクールアニメーション映画賞と、国内主要のアニメーション映画賞を総なめ。海外でも第39回シッチェス・カタロニア国際映画祭アニメーション部門最優秀長編作品賞を受賞するなど、もはや2006年のアニメ界を代表する映画となった。
それだけに、今回の日本アカデミー賞でも受賞が大いに期待されていたが、一方で、同賞は大ヒット映画が受賞する傾向にあると言われているだけあって、受賞は微妙と見る向きもあった。しかし結果はこのとおり。『時かけ』の作品レベルの高さには、審査員からは文句なしだったようだ。
この『時かけ』は、宣伝・公開規模が少なく、単館系での上映であったが、ネット上での口コミで話題を呼び、連日立ち見が出るほどの大盛況だった。こうした口コミ効果によるヒットは、今回の最優秀作品賞を受賞した『フラガール』もまた同様であった。
2006年は、興行収入で邦画が洋画を21年ぶりに上回ったが、その収入の面で貢献した『the有頂天ホテル』『海猿』『デスノート』『ゲド戦記』などといった大ヒット映画は、映画賞においては少し寂しい結果となっている。『フラガール』『時かけ』の受賞は、「口コミ」効果の強さを改めて示したのではなかろうか。
それだけに、ジブリや人気テレビシリーズの映画化以外のオリジナルアニメーション映画では、こうした「口コミ」効果を狙ったプロモーション戦略が今後ますます行なわれていくことになるだろう。今年は、これといった大作アニメーション映画が今のところ出てきていないが、第2の『時かけ』が現れることは十分考えられるだろう。
各部門の最優秀賞は次の通り。(敬称略)
・最優秀作品賞『フラガール』
・監督賞=李相日(『フラガール』)
・主演男優賞=渡辺謙(『明日の記憶』)
・主演女優賞=中谷美紀(『嫌われ松子の一生』)
・助演男優賞=笹野高史(『武士の一分』)
・助演女優賞=蒼井優(『フラガール』)
・脚本賞=李相日、羽原大介(『フラガール』)
・美術賞=松宮敏之、近藤成之(『男たちの大和/YAMATO』)
・撮影賞=長沼六男(『武士の一分』)
・照明賞=中須岳士(『武士の一分』)
・録音賞=松陰信彦、瀬川徹夫(『男たちの大和/YAMATO』)
・編集賞=小池義幸(『嫌われ松子の一生』)
・音楽賞=ガブリエル・ロベルト、渋谷毅(『嫌われ松子の一生』)
・外国作品賞『父親たちの星条旗』
・アニメーション作品賞『時をかける少女』