大作不在の2007年のアニメ映画界で、松竹はどんな駒を用意しているのか?
まずは7月に公開を予定しているのが、『ピアノの森』。一色まこと原作で、現在「週刊モーニング」で連載中の人気漫画のアニメ映画化。アニメーション制作には、昨年『時をかける少女』『パプリカ』といった話題作を生み出したマッドハウスが手がけ、監督にはテレビアニメ『MONSTER』『花田少年史』の小島正幸氏が務める。世界的にも評価の高いマッドハウスの技術力で、どのように表現されるのか注目したいところ。
続いてこちらも7月公開予定なのが、『河童のクゥと夏休み』。『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』で多くの大人たちを感動させ、続く翌年の『アッパレ!戦国大合戦』で、2002年度文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞を受賞した、原恵一監督の待望の最新作だ。
すでに映画自体は完成しており、初号試写では泣き出すスタッフが続出したとか。先日、テレビアニメ『天保異聞 妖奇士』や『銀魂』内で、早くも予告CMが放送され、視聴者の前評判も高い。決して期待を裏切らない傑作になりそうだ。
8月に公開を予定しているのが、『ピンポン』の曽利文彦監督の最新作『VEXILLE』。『ピンポン』での斬新な映像表現が話題を呼んだ曽利監督。2004年には初のフル3Dライブアニメーション映画『アップルシード』をプロデュースした氏だが、今度は自ら監督となってアニメーション映画に挑む。
秋には、時代劇アニメ『ストレンヂア −無皇刃譚−』の公開を予定。アニメーション制作は、『鋼の錬金術師』『交響詩篇エウレカセブン』『天保異聞 妖奇士』のボンズ。具体的な内容は明らかにされていないが、異色作を次々と生み出してきたボンズだけに、異色の映画になることは間違いない。
そして、こちらは具体的な時期こそ未定だが、アカデミー賞短編アニメーション部門にノミネートされた『頭山』の山村浩二氏が監督・脚本を手がける、『カフカ 田舎医者』の公開も予定されている。フランツ・カフカと山村浩二という、二人の世界的作家のコラボでどのような作品になるのか楽しみだ。
いずれの作品も、現在のところ詳しい情報は明らかにされていないが、実力派のアニメーター・監督・スタジオが手がけているというだけあり、興行面はとにかくとして、作品性・芸術性という面では、今年の松竹のアニメ映画は、他社より抜き出たものになると思われる。こうした優れた技術を持った作品を、興行面においてもどのように成功させるか、そこは松竹の腕試しといったところだろう。
さて、これに加えて気になるのは、劇場版『機動戦士ガンダムSEED』の動向だ。『SEED』も松竹配給で公開されることが決まっているが、現時点では松竹のラインアップに入っていない。『SEED』の動向と合わせて、今年の松竹アニメ映画からは目が離せなくなりそうだ。
松竹映画ラインアップ